建築条件付き売買のための農地転用の特例

2024.8.8

 

これまでは、住宅に利用するための造成を理由とした農地転用はすることができませんでした。

 

しかし、最近の住宅に関する多様なニーズにより、2019年の農地転用の特例によって、建築条件付きの売買予定地として農地を造成することが可能となりました。

 

ここでは、建築条件付き売買のための農地転用の特例をご案内いたします。

 

1. はじめに

これまで、住宅に利用するための造成を目的とした農地転用は、当該土地を住宅に利用するとは確実に保証されないことから、禁止されてきました

 

よって、事業者が農地転用を行って住宅を建築する場合には、宅地に造成し、住宅を建築して土地と建物を一体で売却する必要がありました。

つまり、建売住宅・分譲住宅しか建築できませんでした。

 

最近では住宅のデザインや間取りなどについて消費者には様々なニーズがあるのですが、それらのニーズに対応することができない状況でした。

 

このような状況を踏まえて、建築条件付き売買予定地に利用するための農地転用の特例が、2019年から運用されています。

 

建築条件付き売買:あらかじめ住宅の建築業者が指定されている土地の売買のこと。土地の売買の際には、住宅建築の契約もすることが条件です。

建築業者が決まっているので、100%自由とは言えませんが、特例以前よりも格段に自由度が高いです。

建築条件付き売買に関するイメージ図
建築条件付き売買に関するイメージ図

2.建築条件付き売買予定地のための農地転用の要件

建築条件付き売買予定地にするために農地転用許可を受けようとする場合、次の要件をすべて満たすことで、宅地造成のみを目的として農地転用をすることが可能です。

  • 要件1.申請者(※)と土地購入者とが売買契約を締結し、原則3か月以内に、申請者または申請者が指定する建築業者と土地購入者との間で住宅建築についての契約を締結する、ということを約束すること。
  • 要件2.上記1のとおりに、期間内に住宅建築の契約が締結されなかった場合、当該土地に関する売買契約が解除されることが当事者間の契約書に規定されていること。
  • 要件3.申請者は、農地転用許可申請をする土地のすべてを販売することができないと判断したときは、販売できなかった残りの土地に、自ら住宅を建築すること。

ここでの申請者とは、農地転用許可の申請者=転用事業者であり、許可を受けて当該土地所有者となる者のことです。

 

上記1~3の要件を満たしていても、農地転用許可に付く条件に違反したり、申請内容と異なる利用が認められたりした場合は、住宅への利用が確実ではないと判断され、許可が取り消される可能性があります。

3.農地転用許可に付く条件

建築条件付き売買予定地に利用するための農地転用許可がされるとき、次の条件が付きます。

  • 工事の進捗状況は、許可後3か月、1年ごと、工事完了時に報告する。(※)
  • 申請者から土地購入者への土地の引き渡しは、住宅が建築されたことを確認した後、または土地を造成し建築確認が行われた後、のどちらかに行う。

※報告と一緒に、土地の売買契約締結の状況住宅建築の契約締結の状況建築確認の状況土地の引き渡しの状況申請者が自ら住宅を建築することとなったときはその状況についても連絡する。

4.建築条件付き土地の売買と建築の流れ

建築条件付き売買予定地に利用するための農地転用の特例では、建物完成後に土地・建物を引渡すパターン(下図の上段)と建物完成前に土地を引渡し建物完成後に建物を引き渡すパターン(下図の下段)の2つがありますが、下記の図のような順番となります。

「【国土交通省】建築条件付売買予定地に係る農地転用許可の取扱いについて」から抜粋
「【国土交通省】建築条件付売買予定地に係る農地転用許可の取扱いについて」から抜粋

※上図の下段は、建築確認後に土地を引き渡し、建物完成後に建物を引き渡すということです。

5.まとめ

建築条件付き売買予定地のための農地転用の特例についてご案内しました。

 

この特例は、住宅に関する多様なニーズに対応するための制度です。

この制度によって、様々なニーズに対応した住宅建築が可能になり、住宅づくりの自由度が増していきます。

ただし、一定の条件や手続きが必要となるため、事前に詳しく確認することが重要です。

 

このページを手続きの参考となさってください。