農地の仮登記②

2017.11.24

 

仮登記に関する、農地売買の当事者の問題について説明します。

 

農地の取得は原則として、常時農業に従事している者(農家)にしか許可されません。

また、都市計画法により、特別な場合を除いて市街化調整区域の農地を宅地等にする開発許可はされないので、農地法第5条による農地の所有権の移転も許されていません。

 

そこで、市街化調整区域の農地を買う場合には、「農地法第5条による許可があったこと」を条件として売買契約を結ぶことが行われています。

 

将来、市街化区域に変更されることを待つ形です。

それまでは、代金を支払っても買主は所有権を手にすることができません。

 

所有権移転登記はできませんが、所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)をすることができ、実際にこの登記はよくあります。

この仮登記権利者から権利のみを買うという事例も多々あります。

 

しかし仮登記は、後日、本登記をしたときの順位を保全するという役割しかなく、仮登記は他者への対抗要件になりません。

この場合、買主である仮登記権利者は、売主である農地所有者に農地法上の許可申請協力請求権を有するにすぎません。

 

この許可申請協力請求権の消滅時効は10年です。

そして時効は「契約の締結の時」から進行します。

 

つまり、条件付きの売買をし、2号仮登記をしていても、そのまま何もしておかなければ、10年で権利は消滅してしまうということです。

 

ただし、買主が代金全額を支払い、農地を占有している場合、「消滅時効の援用は信義則に反し許されない」とされることもあります。

それでも、第三者が農地の所有権を取得し登記した場合は、第三者から消滅時効を援用することはできます。

 

売主は、10年経過しないうちに買主に念書を書いてもらうように交渉した方がよいです。

 

時効を中断することができます。

 

買主が拒絶した場合でも、訴えを提起することで時効中断になります。

また、10年経過後でも売主が念書を書いてくれれば、同じ効果になります。

さらに、売買契約締結後に農地が農地以外のものになった場合は、買主に所有権が移転する可能性もあります(非農地化したために農地法の許可が不要となるからです)。

 

繰り返しますが、仮登記をしても所有権は移転しません。

 

所有権を移転する前に農地を使用したり、農地以外のものにする場合は農地法違反です。

 

また、仮登記をすることはそのあとの権利関係を複雑にする恐れがあるため、慎重に対応することが必要です。

 

農地法の許可を受けてから登記をした方が権利関係が複雑にならずに、将来のトラブルも回避できます。