2018.9.7
中小企業経営承継円滑化法は中小企業の事業承継が問題なくスムーズに進むことを目的に作られたものです。
この法律は平成28年に改正され、遺留分特例制度の対象を親族外に拡充することや、小規模企業救済法における親族内承継等の共済金引き上げの措置を講じています。
経営承継円滑化法は農業法人に対しても適用されることから、株式会社や持分会社にも適用されますが、農事組合法人には適用されません。
なお、農業に関しては、資本金または出資の総額が3億円以下の会社、並びに正社員の数が300人以下の会社及び個人で、農業を主要な事業として位置づけているところを中小企業者としています。
経営者(父親)が生前贈与や遺言によって後継者(息子など)に自社株式を集中し、事業を承継させよう考えていても、思い通りにいかないときがあります。
それは相続人に「遺留分」というものがあるからです。
遺留分とは、相続人に保障されている最低限の相続分です。
本来自由に相続させることができるのですが、遺族の生活の安定のためや相続人間の平等を確保するため、遺留分によって不公平をなくすようにしています。
他の相続人が莫大な財産を相続し、自己の相続分が遺留分よりも少なくなってしまった場合は、自己の遺留分に相当する財産の返還を要求することができます。
ところが、推定相続人が複数いる場合、後継者に自社株式を集中させようとしても、遺留分が侵害された相続人から遺留分に相当する財産の返還を求められると、せっかく集中させた自社株式が分散してしまうなど、事業承継によってはマイナスの効果を生み出してしまうことがあります。
この遺留分の問題に対処するため、「遺留分に関する民法の特例」が定められています。
遺留分算定の基礎から、後継者に相続・遺贈・贈与した株式や持分を除外することができます。
(後継者が現経営者から取得した株式について、他の相続人は遺留分の主張ができなくなくなるので、分散を防止できます。除外合意といいます。)
または、遺留分算定の基礎に算入するときの価額を、推定相続人や後継者全ての合意時の価額にすることができます。
(自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないから、後継者は想定外の遺留分の主張を受けることがなくなります。固定合意といいます。)
この民法の特例を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
この特例を利用するためには、要件を満たし、現経営者の推定相続人全員(遺留分を有する者)及び後継者で合意(*)をし、書面にすることが必要です。
*合意の内容は主に次のことです。
この合意の日から1ヶ月以内に経産大臣に申請して、確認書を得ます。
そして、この確認を受けた日から1ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをして許可を受けることで合意の効力が発生します。
非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例が適用できます。
旧代表者から後継者に株式・持分を相続させた場合、後継者がすでに取得していた株式等を含めて発行済議決権の3分の2までについて、相続税の80%に対応する納税を猶予することができます。
また、旧代表者から後継者に株式・持分を贈与した場合、後継者がすでに保有していた株式等を含めて発行済議決権の3分の2までについて、贈与税の納税を猶予することができます。