2018.8.10更新
農事組合法人は、「組合員の農業生産についての協業を図ることによりその共同の利益を増進することを目的とする」(農業協同組合法第72条の3)とされています。
そのため、農事組合法人は農業以外の事業を行うことができません。
農事組合法人の議決権は1人1個であるため、集落や複数戸の農家がまとまって事業をはじめるにはちょうど良いです。
しかし事業が複雑化・高度化すると、発展性が乏しく、運営しにくくなります。
6次産業化などの事業の多角化に際して、農事組合法人から株式会社としての農地所有適格法人への組織変更は、検討すべき選択肢の1つになります。
(その他に、別会社の設立という方法もあります。)
出資を受けている農事組合法人(2号農事組合法人)は、株式会社への組織変更をすることができます。
(株式会社から農事組合法人への組織変更は認められていません。)
株式会社への組織変更の具体的な手続きは下記です。
承認決議は、3分の2以上の賛成が必要。(特別決議)
(ちなみに特別決議を要する議決は、(い)定款の変更、(ろ)農事組合法人の解散・合併、(は)組合員の除名 です。)
組織変更をする旨を、官報での公告かつ定款で定めた公告の方法(日刊新聞あるいは電子公告)をとるか、官報での公告かつ知れている債権者に個別に催告をします。そして、債権者が異議を述べることができる期間を1か月以上としなければなりません。
また、組織変更に反対な組合員は脱退することができます。総会に先立って書面などで反対した組合員は、議決の日から20日以内に書面などで持分の払い戻し請求をすることで、組織変更の日に脱退することができます。
組織変更計画で定めた日(効力発生日)に、当該の農事組合法人は株式会社へとなります。
効力発生日より2週間以内に、組織変更前の農事組合法人の解散の登記をし、組織変更後の株式会社の設立の登記をしなければなりません。
これまで、株式会社としての農地所有適格法人への組織変更について説明をしましたが、農地を所有している限り、一定の要件を整えておく必要があります。
そのため、農地法に縛られ、他の事業を展開していくことについては制約を受けることになります。
つまりは、農事組合法人では、農業以外の事業を行うことは不可能ですが、株式会社としての農地所有適格法人であっても、農業以外の事業には制約を受けることになり、完全な自由ではないということです。
農地法に縛られることなく、完全な自由の下で事業を展開していくには、通常の株式会社などを新規に設立した方がよく、その方がシンプルに事業計画をしていくことができます。