2024.9.14更新
農地の取得や賃借などをするためには、許可が必要です。
これは、不適切な者が農地を取得したり借りたりすることを防ぎ、耕作をするのに適切な者が取得したり借りたりすることができるようにして、農地が効率的に利用されるようにしています。
このページでは、農地の取得・賃借の許可の要件などについてご案内していきます。
本来、土地は譲渡す人と譲受ける人が契約を締結することで、その所有権が移転するのですが、農地に関しては、農業委員会の許可を受けることが必要です。
※貸借についても同様です。
この許可を受けていないと、たとえ譲渡す人と譲受ける人が契約をしていたとしても、その効力は生じません。
農業では、農地が効率的に利用されることが望ましいのですが、耕作もしないで、単なる資産保有目的や投機目的での取得を防ぐために規制されています。
農業に対する意欲と能力がある人や法人(耕作者)によって農地が効率的に利用されるように、農地法による許可制が採用されています。
農地法は、耕作者の地位を安定させ、農業の生産力が増大するように働いています。
農地の取得・賃借などの要件もそのような理由で定められています。
農地の取得・賃借などの要件は大きく6つに分けられ、農地法第2条第2項に、許可されない事項が列挙されています。
なお、これまでは、農地取得などをした後の合計農地面積が、一定以上(北海道では2ヘクタール以上、都府県では50アール以上)でなければいけないという要件がありました。
ただし、農業者の確保という観点から、2023年4月1日以降に、この規定は廃止されました。
≪農地法第3条第2項第1号≫
”一 所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合 ”
当該の農地を含めた確保しているすべての農地を効率的に利用できないときは、許可がされません。
※農地を他人に貸しているなどの場合は、その農地を「すべての農地」から除外して考えます。(処理基準より)
※耕作放棄をしていたり、周辺の農地に比べて利用の程度が非常に低い場合は、「効率的に利用している」とは考えられません。
※「効率的に利用」とは、近くの自然条件・利用条件が類似している農地の生産性と比較して判断されます。この場合、経営規模、作付作物を踏まえて、具体的に以下の事項を総合的に判断します。(処理基準より)
≪農地法第3条第2項第2号≫
”二 農地所有適格法人以外の法人が前号に掲げる権利を取得しようとする場合”
法人で農地を取得などしようとするときは、農地所有適格法人でなければ、許可されません。
※ただし例外があります。
≪農地法第3条第2項第4号≫
”四 第一号に掲げる権利を取得しようとする者(農地所有適格法人を除く。)又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合”
本人や家族が、農作業に常時従事しないときは、許可されません。(農地所有適格法人を除く)
※「農作業」には、経営管理を除くので、ここでは体を動かした作業のことです。
※「農作業に常時従事」とは、当該農地を取得などした後の農作業が年間150日以上であればよいです。年間150日未満であっても、必要な農作業に従事していればよいです。また、短期集中的に作業をしなければいけない時期に不足する労働力は、本人・家族以外に依存していてもよいです。(処理基準より)
≪農地法第3条第2項第6号≫
”六 第一号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業の内容並びにその農地又は採草放牧地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合”
農業の内容と当該農地の位置・規模から考えて、周辺農地の農業上効率的・総合的な利用に支障があるときは、許可されません。
他の要件が、農地の取得予定者や当該農地の状況を判断するのに対して、本要件は、当該農地と周辺地域の農業との関連について判断します。
具体的に、次のような場合は許可されません。(処理基準より)
<信託の引き受け>
≪農地法第3条第2項第3号≫
”三 信託の引受けにより第一号に掲げる権利が取得される場合”
信託の引き受けの場合は、許可されません。
<転貸など>
≪農地法第3条第2項第5号≫
”五 農地又は採草放牧地につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業を行う者がその土地を貸し付け、又は質入れしようとする場合(当該事業を行う者又はその世帯員等の死亡又は第二条第二項各号に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため一時貸し付けようとする場合、当該事業を行う者がその土地をその世帯員等に貸し付けようとする場合、その土地を水田裏作(田において稲を通常栽培する期間以外の期間稲以外の作物を栽培することをいう。以下同じ。)の目的に供するため貸し付けようとする場合及び農地所有適格法人の常時従事者たる構成員がその土地をその法人に貸し付けようとする場合を除く。)”
転貸などの場合は、許可されません。
権利関係が複雑になることを防止し、耕作者の地位を安定させるための規定です。
ただし、次の場合は許可されることがあります。
当事者間で農地の契約を締結しても、許可を受けなければ、契約で定めた所有権移転などの効力は発生しないので、登記もすることができません。
そして、許可を受けずに売買などを行った者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い刑罰の可能性があります。
農地を取得などするときでも許可が不要な場合があります。
以下が、許可が不要な場合の主要なものです。
※1 農事調停とは、農地に関する紛争を裁判所における話し合いで解決する制度です。
※2 包括遺贈とは、遺言によって財産の全部または一定割合(2分の1とか、3分の1など)を相手に譲ることです。
※3 特定遺贈とは、遺言によって特定の財産を相手に譲ることです。相続人以外の者への特定遺贈の場合は、許可が必要です。
※4 解除によって、取引が初めからなかったことになるため、許可を受ける必要はありません。ただし、契約を「合意解除」した場合は、当事者の意志によって再度権利の移転をしているため、許可が必要です。
≪農地法第21条≫
”農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。”
農地を賃貸借する際には、契約内容を記した書面(つまり契約書)が必要であり、義務です。
しかし、無料で貸借する場合、契約書は必要ありません。
農地の取得・賃借の許可についてご案内しました。
農家さん・農業法人さんが規模拡大する際だけでなく、新規に就農しようとされる方も法律について少しでも理解しておくことは必要なので、本ページを参考としていただければ幸いです。
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