2021.6.24
【質問】
以前農地を所有しておりましたが、事情があり手放してしまいました。宅地に隣接しているということで、再度所有したいと思いますが、私が農業に従事していないということと農政地域ということで、宅地に変更してというわけにもいきません。何か良い方法を教えてください。
農家以外の方が、転用目的で農地を所有したいというご相談はよくあります。
今回は、上記の質問に回答するという形で、皆様の参考になるように、説明させていただこうと思います。
質問者様は農業に従事していないということ、さらに、おそらくこれから農業をやろうというわけでもないようなので、農地を農地として所有しようとするときの説明は省きます。
農地を農地以外の目的で所有しようとするためには、農地法第5条の許可が必要です。
農地法第5条の許可は、農地の所有者から所有する権利を譲り受けること、および農地を農地以外の目的で使用することを同時に許可してもらうものです。
詳しくはこちらをご覧ください。
今回は、当該農地が農業振興地域(質問者様が農政地域と呼んでいるもののこと。)にあるということなので、このことがポイントになります。
まず、質問に農政地域とありますが、そのようなものはなく、農業振興地域というもののことだと思われます。
(実際に相談される方でも、このような間違いはたまにあります。)
それでは農業振興地域について説明いたします。
農業振興地域とは、「農業振興地域の整備に関する法律」によって、農業を振興するにふさわしい地域として都道府県知事が指定した地域のことです。
一方、市町村は、農業振興地域整備計画というものを作り、およそ10年以上は農業上の利用を確保していく農業振興地域内の土地を、農用地区域として指定します。
指定された農用地区域には集中して、農業に関する公共投資が行われていきます。
農業振興地域内の農用地を「農振農用地」や「青地(あおち)」、農業振興地域内の農用地以外の農地を「白地(しろち)」と呼ぶことがあります。
農振農用地は、原則として農地転用はできません。
農業振興地域内の農用地以外の農地は甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地に区分され、順番に農地転用しやすくなります。
農地転用を考えるために最初にすることは、当該の農地が農振農用地であるのかどうかを調べることです。
(宅地に隣接しているということから、農振農用地ではない可能性がありますが、面倒くさがらず、きちんと調べることが重要です。)
当該の農地がある役所の農政課または農業振興課などの部署で、農振農用地であるかどうかを確認してください。
(それぞれの自治体で部署の名称は様々なので、「農振農用地かどうかを確認したい」と伝えれば、担当している部署を教えてくれると思います。)
担当部署に農振農用地かどうかを確認するとき、当該農地の所在地・地番および面積の情報が必要なため、あらかじめ調べておく必要があります。
調べ方としては、農地の所有者に毎年送られてくる固定資産税の課税明細書で調べる方法、他には、法務局で調べる方法があります。
当該の農地が農振農用地であると判明した場合、その農地は原則として農地転用はできません。
ただし例外的に、農振農用地でも農地転用できる場合があり、それが以下の場合です。
1.公共的・公益的目的での土地利用が適当であると判断されている場合。
つまり、道路の建設や学校・公園の設置などの目的が該当します。
2.農業用施設を建設する場合。
3.一時的に農地転用する場合で、ある条件を満たすとき。
上記3つは、どれも質問者様に該当することはないため、農振農用地を転用目的で取得することはできません。
(例外の3.は、いずれ農地に復元することになるため、農家ではない者は農地を取得できません。)
当該農地が農振農用地のため、農地転用できなくても、当該農地を農業振興地域から除外することができれば、上記3つの目的以外でも農地転用できる可能性があります。
当該農地を農業振興地域から除外してもらうためには、市町村に対して、定められた農業振興地域整備計画を変更してもらうように、申し出る必要があります。
そして、除外が認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
1.当該の土地を農地以外の目的に使用することが必要かつ適当で、農用地区域以外の土地では代わりになることが困難であること。
具体的には、当該の土地が、目的を達成するために必要最小であること、すぐに利用する必要性があること、農用地区域外を検討したけれども目的を達成できないこと、他の法令の許可の見込みがあること、を問われています。
2.農用地区域での農用地の集団化、農作業の効率化などの農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと。
具体的には、当該の土地が、農用地を小間切れにすることのない農用地区域の周辺部または集落のそばにあること、日照・通風・水の放流によって農業に影響がないこと、を問われています。
3.農用地区域内での効率的かつ安定的な農業経営をしている者に対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないこと。
具体的には、当該の農地を借りている人やその周辺農地を借りている人が認定農業者などである場合、農業経営に支障を及ぼさないこと、を問われています。
4.農用地区域内の農用地などの保全または利用上必要な施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと。
具体的には、農道・用水路・排水路・ため池などに支障を及ぼさないこと、を問われています。
5.土地改良事業を行った区域内である場合、工事完了から8年が経過していること。
上記の要件を満たし、農業振興地域から除外されても、依然農地のままであるため、農地転用の許可も必要になるということに注意が必要です。
つまり、当該の農地や農地転用の計画が、農業振興地域から除外するための5つの要件と農地転用の要件を満たす可能性があるならば、農業振興地域内の農地を取得できる可能性があります。
(もし建築物の建築をするために農地転用する場合は、他の法令もクリアする必要があります。)