農家の経営権

2021.6.30

 

農家とは、家業として農業を営んでいる世帯を指しています。

 

市区町村の農業委員会には、世帯ごとの農地の権利関係や経営状況等の管理をするために、「農地基本台帳」というものが備え付けられています。

 

農地基本台帳は、農業委員会が事務処理をするにあたり必要な資料となるため、その世帯についての情報(氏名・続柄・誰が経営者か・誰が後継者か)、所有する農地の情報、農地に使用収益権が設定されている場合の権利の種類およびその存続期間と権利者の情報などが記載されています。

 

そして、この記載事項に変更が生じた場合には、農業委員会への届出が必要になります。

 

農業経営の承継にあたって、農地基本台帳での農業経営者の変更とは、同じ世帯の誰かに経営を移す場合に限られています。

 

その理由も限定されており、以下の5点が該当します。

  1. 高齢のため
  2. 疾病または負傷による療養
  3. 就学
  4. 公選による公職への就任
  5. その他省令で定める理由

(第三者へ経営権を承継する場合や、上記の理由以外で世帯員に経営権を移譲する場合は、農地法第3条によります。)

 

例えば、高齢のために農業経営者が後継ぎに経営権を譲ることを決め、経営主変更届にその旨を記載し、提出すれば、農地基本台帳の記載が変更されます。

 

農業の承継については、経営権の移譲と同時に、農地を含む経営資産(農業機械や農業倉庫、農業技術、人脈など)の承継についても良く検討することが重要です。

 

なお、経営権の移譲に伴う農地の所有権は移転せず、農地の使用収益権(賃貸借や使用貸借など)の設定だけをすることにとどめることもできますが、将来相続が発生した場合に遺産分割協議によって農地などが分散しないように、遺言書を作成するなどの対策を考える必要があります。